クッキーは焼かない

クッキーは配るもの

戦慄!文鳥・おじいさん・僕による春の大三角形!

 

 

今日は、なかなか、バスが来ませんでした。

と書くとなんか普通の日記ぽくてよくないですか?という提案をばあちゃんはしたい。小学生の日記みたいでいい感じだ。牧歌的に生きたいよね的ヴァイヴス。うぇ~い。

 

ちょっと前に買ったワンピースがあって、それがばあちゃんすごくお気に入りだった。でも着すぎたせいか、もともと縫製が雑だったのか、肩口の部分の糸が取れてしまって穴が空いてしまった。悲しい。でも棄てるのも嫌で、街にある服を修繕してくれる店に出したのが約1週間前である。環境に優しくしていくばあちゃんは流行にのっているね!で、それを取りに行く日が今日だったんですよね。

でも冒頭に書きましたけど、マジでなかなかバスが来ない。バスって遅れるものだけど、それにしても来なかった。私なんかしたァ?もしかしてばあちゃんが待ってるから来てくれないのでは……?前世の業……?的被害妄想にこの身を焼きながら待ってたんだけど、それでも来なかった。20分くらい来なかったんじゃないか?ええ……。資本主義の敗北か……?(適当)

で、なんかもう嫌になっちゃって、まあそんだけ待ってたら嫌にもなりますよね、でもこれだけ待って今さら家に帰るのも癪だし、スマートばあちゃんは地面に座って、道端にあった石でもってして、落書きを開始してしまった。いや、だって、なんか落書きに使えそうな軽石が転がっててぇ……水かけたら消えるしぃ……いいかなってぇ……、通報しないでください!通報しないでください!もし通報する気ならせめて最後まで読んでからにして!それでも遅くない!

で、何を描こうかな、としばらく悩んだけど、「一応公道だし牧歌的な絵でも描こう」と思ったばあちゃんはギリギリ理性の人である。しばらく考えた末、昔飼っていた文鳥の絵を描くことにした。丸っこいもちもちフォルムにクリクリの目、おっきいくちばし。「あ~ん♡ちよちよさん(昔飼っていた文鳥の名前です)かわいいですわ~~~~♡」と1人で悶えながら文鳥の絵を量産していたら、知らないおじいさんに話しかけられた。アッ、これは怒られるタイプのやつだ!31歳になって知らんおじいさんに説教されるのか!31歳ってなに!?!?と思って、ばあちゃん赦してくんなましモードに突入だったのだけど、散歩中みたいな感じのおじいさんは「そりゃ鳥と?」とだけ訊いてきた。怒られへの恐怖から「アッ、ブンチョウデス」と片言で挙動不審気味に答えるばあちゃんを尻目に、おじいさんは私も昔文鳥を飼ってたんだけど可愛いね的なことを言ってくれた。怒られの不発だ……。これが……救いですか……?

で、バスも来ないし、そのままおじいさんと話してたんだけど、その時聞いたおじいさんの話が何かものすごかったので共有したい。これを1人で抱え込みたくないんじゃ……。ていうかバスは異次元にでも迷い込んでたのか。

 

***

 

おじいさんが子供の頃、おじいさんのお父さんが文鳥をたくさん飼っていたらしい。白文鳥も、並文鳥も、桜文鳥も飼っていて、お父さんは家の一室をわざわざ文鳥専用の部屋に改造して、当たり前だがその部屋にはわんさか文鳥がいて、おじいさんもかわいがっていたようだ。さて、一般に文鳥は1羽で飼うと人間に激しく懐くけど、複数個体を一緒に飼うと(1羽で飼うときと比べてだけど)人間にそこまで懐かない。子供だったおじいさんはそれが嫌だったらしく、ある日1羽の並文鳥を残して後の文鳥を全て窓から逃がしたらしい。そうすれば残った1羽は自分にたくさん懐いてくれるみたいな、子供の考えそうなことである。かなりの数の文鳥を逃がした後で(おじいさん曰く10羽以上逃がしたとのこと)、おじいさんは自分がヤベーことをしちゃったことに気付いたらしい。これも子供あるあるだよね。

で、確実にお父さんに怒られると思って(そりゃそうですよね)、自分の部屋にこもって、仕事から帰ってきたお父さんが文鳥部屋に入る音を聞いてヒエヒエしていたそうな。でもしばらく経って文鳥部屋から出てきたお父さんは怒らなかったそうだ。お父さんはビクビクしてるおじいさんを心配してきて、おじいさんは疑心暗鬼に陥り、文鳥が1匹だけになっている理由を自らゲロった。でもお父さんは「何を言ってるんだ、文鳥はもともと1匹だっただろう」的な事を言ったらしい。

 

***

 

僕「え、なんすか、なん、その話!?!?」

おじいさん「なんやったんやろうねぇ。ばってんそん後1羽残した並文鳥もいつん間にか消えてしもうたっちゃんね。」

僕「ピャッ!?!?!?!?」

いや怖すぎない?何でそんな話を見ず知らずの私にした!?!?と戦くばあちゃんを無視しておじいさんは話を続けるもんだから、ちょっと私の存在を無視しないでください!になった。なるでしょこんなの。ほんわかした見た目のおじいさん(しかも全く知らん人)が急に怖い話してきたら誰だってそうなるでしょ。ばあちゃんだってそうなる。

 

***

 

で、まあ、おじいさんがしてくれた話を(すごく雑に)最後まで書くと、その後1羽残っていた並文鳥までもが消えた後、いつの間にか文鳥用だった筈の部屋は物置に変わっていて、家族全員「文鳥なんか飼ったことない」と主張して、「家には文鳥がたくさんいた」派のおじいさんは病院に連れて行かれかけたらしい。でもなんやかんや結局連れて行かれなかったらしい。

 

***

 

「消えた文鳥たちは一体どこしゃい行ってしもうたっちゃろうねぇ。ばってん、うちん家ん物置からたまに文鳥ん鳴き声が聞こえるけん、そこしゃいおるとかな。あんたん家にもおるかもしれんしね。」と地味にメチャクチャ怖い事をガチガチの博多弁でのんびりぼやくおじいさんを目の前にして、いやだからなんでそんな話私にするんですか……。バスが来ないのが悪いんでねえか、私が文鳥の落書きを公道にしたから、天罰が……もしや、このおじいさんは天の使いなのか……?そう悶々と考えていたら漸くバスが来た。「アッ、バスガキタノデェ……」とモチャモチャ言いながら落書きにペットボトルのお茶をぶっかけて消し、急いでバスに乗ったんだけど、なんだったんだろうね、あの話。文鳥……消えた文鳥たち……おじいさん……そして……僕……。という感じで嘘か本当か分からないおじいさんの謎話について考えながらバスに揺られ、街に着き、ワンピースを受け取り(綺麗になっていました)、地下にあるスープストックと~きょ~でカレーのセットをモッチモッチと食べ、食べながら脳に浮かぶのは文鳥、おじいさん、そして僕。この春の大三角形を如何にして処理すれば……。私はこの話の一体どこにいるんだ……。三角測量ですか……?三角測量すればいいの……?

 

というのがことのあらましである。おじいさんは文鳥を消す能力者だった……?

まあ普通に考えれば、おじいさんが私をからかおうと思って作り話をしたのだろうけど、なんか安易にそうも思えないんだよね。だって、何をもってしておじいさんの話を嘘だと言えばいいんだ?これが分からない。

エビデンスもない他人の個人的な話を一方的に嘘だと断定するのはなんだかよくない気がする。そんな気がしません?ばあちゃんはそんな気がする。それに、これは私しか分からないことだけど、嘘吐いてる感じもしなかったんだよな。なんというか、「昨日の夕飯に○○を食べた」みたいな話程度のさらっとした話し方で、どうも嘘を吐いている感じがなかった。その上、嘘だろうと本当だろうと実害が全くないタイプの話である。そういう系の話って更に真偽を追求する気にならないというか。ていうか、おじいさん最後の方で「あんたの家にも文鳥いるかもね」つってたけど、僕の家の物置に文鳥がたくさんいたら嬉しい……普通に……。文鳥……可愛い……。もちもち……。むしろばあちゃんの家に文鳥いてくれ……。なので怖い話としても成立しない。だって家に可愛い文鳥がたくさんいるって、なんかもう、こう、もう可愛いじゃん!(ボキャブラリーの貧困)

だから僕にはおじいさんの話が嘘か本当か分からないし、嘘か本当か断定することもしたくない。これはこれで面白いしね。私に分かっているのは、このブログ記事の内容が1から10まで全部作り話ということだけである。僕はワンピースの修繕なんて依頼してないし、バスも待ってないし、公道に落書きもしていないし、ちよちよさんという名前の文鳥は飼っていなかったし、街にも行っていないし、スープストックと~きょ~でカレーのセットも食べていない。僕に話しかけてきたおじいさんもいない。

でも、虚構おじいさんの話の真偽は今も不明だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

辛いならピルを飲め

 

 

たまには皆様にお役立ち情報を捧げようと思ったわけです。ゥチゎこんな感じゃった的なゆるゆるお役立ち情報です。

 

低容量ピルを飲み始めて約3ヶ月経った。

もともと私はそんなに月経が重くはなかった。10代の頃などは1日目に軽く腹が痛くなる程度。でもまあ出血量は凄く多くて、血漏れ(?)に戦々恐々していた。が、まあそんな程度である。つまり軽かったのだ。

しかし、20代半ばからどんどん重くなっていき、30歳過ぎた私は

・月経2、3日前から腰と腹の鈍痛が開始する
・月経開始後2日間は激しい腹痛に悩まされ、酷いときは冷や汗が出て一歩も動けなくなる
・月経開始後2日間は腹痛とだるさで起き上がれなくなる
・市販の痛み止めが効かない
・出血量が2日目まで非常に多く、過多月経用のナプキンを使わざるを得ない
・血が漏れるのを防ぐために月経中は寝るときも必ずタイツとぴっちしズボンを穿き続ける(それでも防げないときは防げない)

というヒャアヒャア状態に突入していた。俺の子宮は世紀末である。ナプキンは3種類(過多月経用・多い日用・普通の日用)常備し、私は日によって異なるナプキンを使いこなすナプキン・マスターと化していた。ナプキンが共にあらんことを。ちなみに、2日目まで過多月経用、3~4日目が多い日用、それ以降が普通の日用という感じである(タンポンは使ってみたけどなんか合わなかった)。出血量の多い人は分かってくれると思うが、血をしこたま吸ったナプキンが重くてかったるい。月経のだるいことだるいこと。人によっては月経ってQOLを下げまくる要因になるんですよね。まじなんなん。人体。月経は寡占企業だからって調子に乗り過ぎてる。嬉しいオプションとか付けていかないと、この資本主義世界を生き抜いていけねぇぞ!?

まあそんなこんなで私は毎月(私は月経不順になったことがほぼなく、28~30日周期で毎月きちんと月経が来ていた。とても素晴らしいことなのだが、コレはつまり毎月えげちぃ腹痛が来ることを意味している)月経への呪詛をまき散らす哀しきマシーンだったのだが、30歳も過ぎたことだし、どんどん月経が重くなってるし、腹痛で救急車を呼んだインシデント(当ブログ「ばあちゃん、腹痛の巻」参照のこと)もあったし、ということで産婦人科に行ってみたわけだ。去年の12月のことである。

 

診断して貰った結果(先生がすごい面白い人で色々あったのだが、面倒なので今は書かない)、子宮内膜症による月経困難症だわね、という話になり、私に低容量ピル服用の提案がなされた。

その時言われたのが、
・18歳くらいで結婚していた時代だと、複数回の妊娠、出産、授乳によって月経が止まり子宮が休息できていたが、現代の女性は妊娠、出産、授乳によって子宮に休息が与えられにくくなっている
・つまり、昨今は子宮が休みなく働いている状態にあることが多い
・上記より、現代女性の子宮の職場環境はブラック企業並なことも多い
・妊娠すれば子宮は休まるけど、そう上手くいかないのが現実である
・なので、月経がえげちぃなら妊娠の代わりにピルを飲んだ方がよい

と同時に、
・また、子宮が働いた疲れは休ませても取れないタイプのものである
・なので、ピルをしばらく飲んだからと言って子宮内膜症も月経困難症も治らない。飲むのを止めれば前と同じFUCKTUUがやってくる
・ピルは現状維持の技法である
・故に、月経が重いならば、なるべく若いうちからピルを飲んだ方がよい

という説明を受けた。で、「飲んでみるかい?」と訊かれたので、「ほんならまあいっちょ飲んでみましょう」ということで私は低容量ピル(厳密に言うと私が飲んでいるのは超低容量ピルなのだが)を飲み始めた。ちなみに私が飲んでいるのはあすか製薬のFREWELLというジェネリック・ヤクである。安い。ワンシート(一ヶ月分)1500円くらいである。

注意事項は以下。
・34歳以上の喫煙者が低容量ピルを飲むと血栓症のリスクが高まるので、今のうちから禁煙すること(できてない)
・ピルの避妊成功確率は高いが、性病は防げないので避妊具は必ず使うように(まあ当たり前であるし、避妊のために飲むんじゃないから比較的どうでもいい)
・毎日同じ時間に飲むこと(アラームかけとけば解決ですね)
・月経が来なくなるわけではないのでそこんとこ4649

私が飲んでいるピルは21日間飲んで7日間休薬するタイプで、その休薬の間に月経がくるわけである。生理不順の人が低容量ピルを飲むのはそういうわけだ。他のタイプのピルのことは私よく分からないのだが。

 

本題はここからである。低容量ピルを飲んでお前どうなったん?というのが重要ですよね。飲み始めて3ヶ月ということで私は3回月経を経験しているのだが、以下の通りです。

・月経2、3日前から腰と腹の鈍痛が開始する→完全に消え失せた
・月経開始後2日間は激しい腹痛に悩まされ、酷いときは冷や汗が出て一歩も動けなくなる→腹痛が消えた、あってもめちゃくちゃ軽くなった
・月経開始後2日間は腹痛とだるさで起き上がれなくなる→完全に消え失せた
・市販の痛み止めが効かない→痛み止めを飲まなくなった
・出血量が2日目まで非常に多く、過多月経用のナプキンを使わざるを得ない→約1週間まるごと普通の日用ナプキンで大丈夫になった
・血が漏れるのを防ぐために月経中は寝るときも必ずタイツとぴっちしズボンを穿き続ける→完全に消え失せた

勿論個人差はあるだろうが、私の場合は本当にマジで生活が変わった。この劇的ビフォーアフターを見よ。見よ。見よ。

お腹が痛くなっても、「なーんかぼんやり痛いなあ」程度で薬を飲む必要性を感じないくらい、つまり2日間寝込まなくて済むんですよ!?月経1、2日目と非常勤やら授業やらが重なって屍のごとくテンション無みたいなこともなくなるんだぞ!?!?オイ!!!ていうか普通の日用で全て事足りるってなに!?血がちょびっとしか出ない!血が漏れてズボンが赤褐色に染まらない!股が重くない(物理)!かっるい!!むれない!!爽やか!!さいあんどこう!!!!!5月の風!!!!!!!(ちなみに多い日用と月経過多用のナプキンは、研究室の後輩ちゃん達に譲渡した)

1ヶ月後の再診の時、先生にこの感動を語ったところ「よかったね。皆もっと早く飲み始めればよかったって言うんだよね」と言われた。その通りである。私ももっと早く飲み始めればよかったかもな~、と思う。つまりどんどん月経が重くなっていった20代半ばから飲んどけばよかったかなという話である。まあ今更言っても仕方ないので、今はこのクレイジー爽快感をエンジョイジョイしている。enjoy and joy…….

 

というわけでお役立ち情報であった。月経が辛い人はもう皆さっさと産婦人科に行って低容量ピル処方してもらって飲んだほうがいい。マジであなたの人生、変わるわよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

わたくし財閥令嬢、異世界転生して全て金の力で解決しますわよ!

AIのべりすと君(https://ai-novel.com/index.php)になろう小説を書いてもらいました。

私はタイトルおよび主人公の名前を考えて最初の導入を書いたのと、ちょっとした方向調整しかしていません。AIのべりすと君が殆どを頑張って書き上げました。ツッコミながら読んであげてくださいね。

 

***

 

わたくしの名前は武源舍リッチ子。

武源舍家は日本を代表する財閥ですのよ。しかしあろうことか自分の16歳の生誕祭にて、床に落ちていたローストビーフで滑って転んで死んでしまいましたの。こんな死に方ってありませんわよ!わたくし、未来を期待された麗しき財閥令嬢ですのよ!?

しかし、気付くと目の前に自称女神様がいらっしゃいまして、わたくしを異世界に転生させると言い出しましたので、わたくし驚き桃の木山椒の木でしてよ!

どうやらわたくしはあの場所で死ぬ予定ではなかったようですの。女神様のお詫びみたいなものですわね。一昨日来やがれですわ。

ドドメ色の光りに包まれ、目を開けるとそこは草原。

「わたくし、本当に異世界に転生したのですわ???」

草原の向こうに小さく街が見えますわね。まずはあの街に向かってみましょう。わたくし選ばれしお嬢様。選ばれしお嬢様はあらゆる状況にフレキシブルに対応するもの。さあ、あの街に行きますわよ!!!

草原を歩いているとき、そういえばスキルをもらったということを思い出しましたの。わたくしのスキルは金で全てを解決出来る能力だとか。早速試しに使ってみましょう!

「スキル発動!」

『お金ちょうだい』

すると足元に魔法陣が現れて金貨がたくさん現れましたわ。まぁ!なんて素晴らしいスキルなんですの! これならどんなことでも出来てしまいますわね!しかしスキル名がないのはかっこわるいですわ。スキル名を考えましょうかしら。そうですわ、わたくしのスキル名は……

『マネーパワー』

うふふ、これで決まりですわね! 街までもう少しというところでモンスターが出てきましたわ。ゴブリンでしょうか。とりあえずこの世界に来て初めての戦いということですし、軽く戦っておきましょうかしら。

「マネーパワー!」

『お金ちょうだい』…………わたくしの手のひらに金色の光が集まり、金の玉が!これは金塊ですわ!すごいですわ!これがわたくしの力なのですね! わたくしは金塊をゴブリンに思い切り投げてぶつけました。

『ギャアァ!!』

ゴブリンは悲鳴をあげて倒れ、そして消えていきましたわ。さて、街に向かいましょう。

 

街に入るとたくさんの人がいて、みんな笑顔で楽しそうな雰囲気ですわね。それにしてもここはどこなのでしょう。地図のようなものがあればいいのですけれど……。そうですわ、わたくしが先ほどスキルで出したこの世界のお金で何か買えば分かりますわよね。金の力で全て解決ですわ!金をぶつけながら街の人に尋ねてみると、この街は冒険者ギルドがあるとのことでした。わたくしは早速向かうことにしましたわ。

到着いたしましてよ。ここが冒険者ギルドですか。中に入りましてよ。

「すみません、わたくし冒険者として登録したいのですけれども」

受付の女性は愛想よく答えてくれましたわ。

「はい、こちらへどうぞ〜」

わたくしは案内された部屋で書類を書き、説明を受けましたわ。

「では最後にステータスプレートに血を一滴垂らして下さい。これであなたの情報が全て分かるようになりますので。それでは頑張ってくださいね!」

受付嬢さんに言われた通りやってみると、あら不思議!カードに文字が浮かんできましたの!どれどれ〜?

名前:リッチ子・ブゲンヤド

性別:女性

種族:人間(異世界人)

年齢:15歳

職業:なし

レベル1 体力100/100 魔力100/100 攻撃力20 防御力15 素早さ25 知力80 精神力100 スキル:マネーパワーLV10,アイテムボックスLV10,鑑定LV10,剣術LV4,料理LV6

称号:元財閥令嬢

異世界からの転生者

おほぉ!ステ値がとても高いですわ!!やはりわたくしは選ばれしお嬢様なのでしてよ!しかし職業がないですわね。一体どういうことなのかしら? まあそんなことはどうでもよろしいですわ。わたくしはお金さえあれば何でも出来ますもの。

わたくしが高笑いしていると、誰かが話しかけてきましたわ。

「お前、新入りか?」

振り向くと見慣れない服を着た男性と女性が立っていましてよ。

「あなた達は誰ですの?」

「俺はシンだ。こっちはミウ。俺たちは勇者パーティーとして魔王を倒す旅をしている」

「わたくしは武源舍財閥令嬢の武源舍リッチ子ですわ。それで、なぜわたくしに話しかけてきたのですの?」

「それはな、俺達も今日から冒険者になるんだが、一人だと心細いから仲間を探していたんだよ。そしたらちょうどお前がいたってわけだ。一緒にやらないか?」

わたくしは即答しましたわ。

「やりますわ!!」

こうしてわたくしはシン様とミウ様と一緒にパーティを組むことになりましたの。

 

パーティーも組んだことですし、早速クエストというものを受注してみることになりましたわ。

『クエスト一覧』

薬草採取 ゴブリン討伐 スライム退治 コボルト狩り

「よし、まずはゴブリン討伐のクエストを受けてみるか。行くぞ、リッチ子、ミウ!」

「うん!」

「よろしくてよ!」

わたくしたちは街を出て草原にやって来ましたの。

「あれがゴブリンか。見た目は普通の人間に見えるな。だが魔物だからな。気をつけろよ」

「当たり前田のクラッカーですわ!スキル発動!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

わたくしの手のひらには大量の金貨が現れましたの!

「さぁ、わたくしの金の力で倒してしまいますわ!いきますわよ!これが金の力ですわ!」

わたくしは思い切り投げつけましたわ。

『ギャアァ!!』

ゴブリンは悲鳴をあげて倒れ、そして消えていきましたわ。

「やったな!さすがはリッチ子だぜ!頼りにしてるぞ!」

「すごいね、リッチ子ちゃん」

ふふふ、お二人とも褒めてくださって嬉しいですわ。もっと頑張りませんとね!さて、次のゴブリンを探しに行きましょう。

しばらく進むと、なんとオークが2体出てきましてよ。

「お、おい、なんだありゃ!?オークじゃないか!しかも2匹もいるぞ。どうする、逃げるか?」

わたくしは首を横に振った。

「大丈夫ですわ!わたくしに任せてくださいまし!スキル発動!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

わたくしは金塊を投げ、見事命中させましたわ!

『グオォッ!』

2体のオークのうち1体が悲鳴をあげて倒れ、そして消えてしまいましたわ。残る1体は怒り狂い、わたくしに向かって突進してきましたわ。

「危ないっ!」

シン様が間一髪でわたくしを突き飛ばし、かわしてくれました。

「きゃあっ」

わたくしは尻餅をつきました。

「大丈夫か、リッチ子!」

「え、えぇ、ありがとうございますわ」

「あのね、私も戦うよ!魔法を使うから、見ててね!」

ミウさんがそう言うと、杖を掲げ呪文を唱え始めましたの。

「炎の精霊たちよ、我が呼びかけに応え姿を現せ。いでよ、サラマンダー!」

すると、ミウさんの頭上に火の玉が出現し、勢いよく飛んで行きましたの。

その火球は見事にオークに命中しましたわ。

『ギィヤァァ……』

オークは断末魔をあげながら倒れ、消え去ってしまいましたわ。

「お疲れ様ですわ!ミウ様もとてもお強いんですわね!わたくし感動いたしましてよ!」

わたくしは興奮気味に言いましたわ。

「あはは、そんなことないよ。でも、リッチ子ちゃんが無事でよかった」

なんて優しいのかしら。この方がわたくしの初めてのご友人ですわ。

その後も順調にクエストをこなし、わたくしたち、レベルも10になりましたの。

「ミユ様、シン様。わたくしたち、そろそろ難しいクエストに挑戦する頃ではありませんこと?」

「そうだな。よし、受けてみるか」

「うん。やってみよう」

 

わたくしたちはギルドの掲示板を見ました。

「これなんかどうですの?」

レッドドラゴン討伐』

「いいんじゃないか?じゃあこれにしよう。受付に行こうぜ」

「うん!」

わたくしたちは受付に向かいました。

「こんにちは。本日はどのような御用件でしょうか」

「このクエストを受けたいんだ」

「かしこまりました。こちらのクエストはAランククエストとなっております。よろしいですか?」

「もちろんですわ。問題ありませんわ」

「かしこまりました。では、クエストの説明をさせていただきます。まず、クエスト出発地点はここから馬車で約3時間ほどのところにある洞窟になっております。そこのボスがレッドドラゴンです。クエスト達成条件は、ボスの討伐です。それでは、行ってらっしゃいまし」

こうしてわたくしたちは馬車に乗って出発したのですわ。

そういえば、わたくしのスキルはどの程度進化したのかしら。わたくしはステータス画面を開きましたわ。

『マネーパワーLv10

・金を生み出すことが出来る。

・金を増やすことも出来る。

・金を消すことも可能。

・他人の金を奪うことも出来る。

・奪った金は自分のものに出来る。』

まぁ、素敵ですわ!嬉しいですわね。この金の力でドラゴンなど一発でぶっ殺してやりますわよ!

ミウ様、シン様!もうすぐ目的地ですわよ!準備はよろしいかしら?」

「おう!いつでも行けるぜ!」

「私も大丈夫だよ!」

「さすがですわ!では、いざ参りましょう!」

 

わたくしたちはついに、目的の場所へとたどり着きましたわ。

そこは山の奥深くにある洞窟でした。

「ここか……」

「中に入ってみよう」

わたくしたちが一歩足を踏み入れたその時でしたわ。

『侵入者確認。排除スル』

突如として、機械的な音声が聞こえたかと思うと、わたくしたちの前に、体長5mはある巨大なゴーレムが現れましたの。

「な、何事ですの!?」

「くっ、やるしかないようだな」

「そうだね。いくよ!」

3人で一斉に攻撃し、わたくしはスキルを繰り出しましたわ。

「わたくしの必殺!マネーパワー!」

わたくしの手のひらに金色の光が収束していき、そして放たれましたの。これは金のオーラですわ!

「いけぇぇぇぇぇ!」

光弾は一直線に飛んでいき、見事命中しましたわ。

『グガァァァァァァ!』

ゴーレムは断末魔をあげながら消えていきましたわ。

「やったー!倒したぞ」

「お疲れ様!すごいね、リッチ子ちゃん」

「いえ、それほどでもありませんわ。それより先に進みませんこと?まだこの洞窟の奥にはドラゴンがいるはずですもの」

「ああ、そうだな。行こう!」

それからは順調に進んで行きましたわ。道中、またゴーレムやオークなどのモンスターと戦いながら進み続けました。

すると、前方に大きな扉が見えてきましたの。

「あそこにボス部屋があるみたいだな」「よし、行くぞ」

「ええ」

 

その部屋の中央には真っ赤なドラゴンがいましたわ。

『金の匂いがする……』

このドラゴン、言葉がしゃべれますの?

『我の名はレッドドラゴンである。お前たち、人間か?』

「あ、あぁ。俺らは冒険者だ」

『ほう……それは珍しい。では、なぜここに来た』

「俺たちは強いドラゴンと戦ってみたくてここまでやってきたんだ」

『なるほど……。そういうことなら相手をしようではないか。貴様らの名を教えろ』

「俺はシン。こっちはリッチ子とミウ

「よろしくお願いします」

『ではいくぞ……。レッドドラゴンの力、とくとみるがよい!』

そうレッドドラゴンは咆哮すると、わたくしたちの目の前にグラフが!これは……

「株価チャート!?」

レッドドラゴンは株のトレーダーでしたの!?

「まさか、ドラゴンの奴が株取引をしているってのか?」

「信じられないけど、そうとしか考えられないですわね……」

『これは株取引のシミュレーション画面だ……安心して戦うがよい……』

「株の取引なんて分からないよ」

『まずは100万ゴールドから始めるとするか』

レッドドラゴンがボタンを押し、金が動き始めましたわ。

「おい、なんか上がってるぞ!」

「これってもしかして……」

『ふふふ、そうだ。これが株価の動きだ。さぁ、どう対処する?』

わたくしは、シン様とミウ様に視線を向けましたわ。

ミウ様、シン様、ここはわたくしに任せてくださいませ」

「お、おう。任せたぜ」

「頑張ってね」

『ふふふふふふふ、それではいくぞ。株式売買開始』

わたくしは、両手を前に出しましたわ。

「マネーパワー!」

『お金ちょうだい』という声が鳴り響きましたわ。

『なんだそれは』

「これはスキル名ですわ。わたくしのスキルは金を生み出すことが出来ますの。そして、金を増やすことも消すことも可能ですわ。つまり、このスキルを使えば……」

わたくしの手に、金色の光が集まり、それがどんどん大きくなっていきますわ。

「この通り、莫大な富を生み出しますわ!」

『な、なんと!』

「さぁ、覚悟なさいまし!まさか異世界で株式売買バトルをするとは思ってもおりませんでしたけれども!」

『ぐぬぅ!だが、負けん!このレッドドラゴン、全財産を賭けて勝負してやる!』

「望むところですわ!」

わたくしたちは、株式トレードを始めましたわ。

「まずは1000万ゴールドで売りましょうか」

『む、いきなりそんな大金をか。いいだろう。では、買い取るとしよう』

わたくしの手の中で、ゴールドが動き始めましたの。

「あら、意外と安いですわね」

『ふっ、馬鹿め。この程度の額など一瞬にして稼いでくれるわ』

「そうですのね!わたくしをあまりナメないことでしてよ!」

わたくし財閥令嬢、転生前は株式トレードなどお作法同様常日頃より嗜んでおりましたのよ!久々に株式トレーダーの腕が鳴りますわ!

「わたくしのマネーパワーをお見せいたしますわ。まずは、10億ゴールドで売りに出しますわ」

『ほう。ならばこちらも一気に売るとしようか』

「ええ、その方が賢明ですわ。お互いの利益のために」

わたくしはゴールドを動かしましたわ。

「これで、わたくしの勝ちですわね!」

『甘いな。我が全力を持ってすれば、貴様の株を買い占めることくらい容易いことだ』

「なんですって!?」

『では、早速実行するとしよう』

「面白くなってきましたわ!」

『まずは、5千万ゴールドでどうだ?』

「ええ、それで結構ですわ」

『ふふ、そうか。では、買わせてもらうぞ』

「まあ、わたくしの勝ちのようですね」

『なに!?どういうことだ!?』

「マネーパワーは無限の力を持っておりますもの。いくらでも増やすことが可能ですわ」

『そ、そんなバカなことがあってたまるか……』

「信じられないなら試してみるとよろしいですわ」

『く、クソォオオオ!』

「残念ながら、わたくしの勝ちですわ」

『なぜだ……なぜ勝てぬのだ……』

「あなたが私に比べると弱いからですわ」

『クッ……認めねばならぬようだな……』

レッドドラゴンが頭を下げましたわ。

「これが裁量取引というものですわ!」

『うむ……見事だ……。我が完敗だ』

「ありがとうございますわ」

『では、約束通り、我の財宝をくれてやろう』

レッドドラゴンはそう言うと、わたくしたちに財宝を渡してくれましたの。

「やったぜ!なんかよく分からねぇけど勝ったぜ!」

「よかった~」

「なんとかなりましたわね」

3人で喜び合いましたわ。

『では、さらばだ……』

「ああ、また来てくれよ!」

「元気でねー」

わたくしたちは洞窟を後にいたしました。

「ふぅ、やっと出られたな……」

「疲れた……」

シン様とミウ様がぐったりしていますわ。

「お二人ともお疲れ様ですわ」

「リッチ子もお疲れ様!リッチ子ってすごいんだね!」

「なんか、すげぇもん見ちまったぜ」

「ふふ、それほどでもありましてよ」

わたくしは得意気に笑いましたわ。

「さて、それではギルドに戻りましょうか」

 

ギルドはわたくしたちが株式売買バトルでレッドドラゴンに勝ったということで大騒ぎでした。

『おい、聞いたか?あの有名なパーティーがダンジョン攻略したらしいぞ』

『マジかよ!一体どんなパーティーなんだ?』

『なんでも、たった3人のパーティーなんだとよ』

『嘘だろ?』

『本当だって!ほら、あいつらがそうだ』

『あれ、本当に人間なのか?』

『間違いない。鑑定で確認してみろよ』

『どれどれ……って、ええええええ!』

『ど、どうした?』

レッドドラゴンと戦ってる奴がいるんだけど!』

『はぁ!?ドラゴンと戦うなんて正気か!?』

『しかも、レッドドラゴンの資産全部奪って勝ってやがる!』

『す、すげえな』

喝采が気持ちいいですわ~。わたくしが意気揚々とオレンジジュースを飲んでいると、一人の男が話しかけてきましたの。

「お嬢ちゃん、強いんだってな」

「あら、あなたは?」

「俺は冒険者だ。この国の勇者でもある」

「まあ、そうなんですのね。それで、わたくしに何かご用かしら?」

「麻雀って知ってるかい?」

「麻雀?もちろんですわよ。それがどうかしましたの?」

男は感心したように口笛を吹くと、シルバードラゴンが賭け麻雀で戦っていることを教えて下さいましたの。

「俺たちはシルバードラゴンに有り金全部とられちまってな。お嬢ちゃん、レッドドラゴンの資産を全部奪ったんだろ?シルバードラゴンの討伐に俺たちの代わりに向かってくれねえか?」

「ええ、構いませんわ」

「助かるぜ!」

「でもその前に一つお願いしたいことがありますの」

「なんだい?」

「わたくしはお金しか信用しておりませんの。ですから、先に報酬を全て下さることを約束して下さいませ。」

「もちろんだ。じゃあ向かってくれ」

そうして、わたくしとミユ様とシン様は、シルバードラゴンとの賭け麻雀対決に向かったのですわ。

 

シルバードラゴンは北の洞窟の奥にいました。

『なんだ人間。麻雀をしてワシに金を奪われに来たのか?』

「ええ、そうですわ」

『クッハハッ!笑わせてくれる!そんな貧弱な腕で何が出来るというのだ!』

「わたくしが負けるかどうかは対局まで分かりませんわ。お互いの全財産を賭けた麻雀対決!いきますわよ!」

『ほう……面白い……』

「さあ、早速賭け麻雀を始めましょう!」

わたくしたちは麻雀卓を囲みました。わたくしの配牌は中々良い感じですわ。

「ドラは1枚ですわね」

『クッハハ!お前たちにはドラは渡さん!』

「ふっ、では私はリーチをかけますわ」

『フン!そんなもので役になると思っているのか?』

「ロン!リーチ一発平和ドラ裏ドラ3で親倍ですわ!」

『クッ……まさかこんなことが……』

「さあわたくしの連荘ですわよ!」

ぐぬぬ……だがまだ終わらんぞ!』

「ロン!国士無双!」

『馬鹿な……』

「これで終わりですわね」

『ぐあああっ!!』

シルバードラゴンが断末魔をあげて倒れましたわ。

「ふぅ、なんとかなりましたわね」

わたくしが勝利の余韻に浸っていると、ミウ様が話しかけてきましたの。

「リッチ子凄かったね!」

「おひきのミウ様もなかなかの活躍だったと思いますわよ」

「ううん、リッチ子の方がすごいよ!」

「ありがとうございますわ。さて、シルバードラゴン、あなた様の資産、全て受け取りますわよ!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

『グオオオッ!!』

ドラゴンの咆哮と共に、わたくしの手のひらに金の力が集まっているのが分かりましたわ。

「これが……金の力……」

『グオオォッ!!!』

そして、わたくしがドラゴンの資産を全て奪おうとしているときでしたわ。

「待ちなさい!!」

声の主は美しい金髪の女性でしたの。その女性はわたくしに向かってこう言い放ちましたわ。

「あなたは一体何をしているのですか!?」

「あら、あなたは?」

「わたくしはこの国の王女です。今、この国の資産が盗まれようとしています。それは許されざる行為です。」

「まあ、わたくしが得ようととしていたのはドラゴンさんの資産だけですけれども?」

「なんですって!?あなたは何者なの?」

「あら、ご存知ありませんの?わたくしは財閥令嬢リッチ子・ブゲンヤドですわよ?」

「……でも、そのお金はわたくしたちが使うべきものよ!返してもらいますわ!」

「あらあら、随分と横暴なお方ですわね。これはわたくしがドラゴンから貰った金に違いありませんもの。では、どうしますの?わたくしのマネーパワーは無敵ですわよ?」

「なら、力ずくで奪ってみせます!」

「まあ怖い。それならば、こちらも全力で行かせていただきますわ。マネーパワー発動!」

『お金ちょうだい』

手のひらに金のオーラが集まっていきますわ。王女様はひるんだようですけれど、兵士を使ってミユ様とシン様を人質にとりましたの。

「うっ……」

「ミユ様!シン様!」

「フッ、リッチ子とやら、人質の命がどうなってもよいのですか?」

「くっ……卑怯な真似を!」

「さあ、ドラゴンの金をよこしなさい!」

「残念ながら、お金はあげられませんわね」

「なぜ!?」

「だって、これはわたくしの金ですもの。金は人命よりも尊くてよ」

王女様は怒り心頭といった感じで顔を真っ赤にしておりますわ。なんて面白い見世物だこと。

「リッチ子・ブゲンヤド、あなたを指名手配します!国に逆らった罰です!」

「ふふふ、そんなことをしても無駄ですわ!わたくし握った金は死んでも手放しませんことよ!」

ここから一旦逃げなくては。

「マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

金の塊が足下で蠢きますわ。

「うぐっ……動けん……!」

「な……なんですって……!」

「さあ、逃げますわよ!」

わたくしは洞窟の入り口に走っていき、金塊で入り口を塞ぎましたの。

「ふぅ、これで安心ですわね」

「クッハハハハ!お前たち、もう逃げられないぞ!」

「何者ですの!」

「俺の名はブラックドラゴン!この世界の王となるものだ!」

突然ドラゴンが現れましたわ。わたくしは逃げようとしていますのに困りますわ。さっさと倒さなければ。

「なるほど、あなたはどのような金の取り合いをしますの?」

私は目の前にいる黒い竜に対してそう問いかけたのですわ。

すると黒龍は笑いながら答えましたの。

「ククク……俺はどんな奴にも勝てる最強のスキルを持っているのだ!」

ふむ、それは興味深いですわね。

私のマネーパワーは最強ですわ。しかし、私以外の誰かがわたくしよりも強いスキルを使えるとは思えませんでしたの。

もしこの世界に存在するとしたら、わたくしよりも強いということ。

「わたくし、あなたのような強そうな方に会えて嬉しいですわ」

「ほう、お前もなかなかできるようだな。だが、俺たちの戦いは金だけじゃないぜ?」

「あら、どういうことですの?」

「例えば、そうだなぁ。こういうことだ。スキル発動!!【剣舞・百花乱れ咲き】!!」

すると、突然無数の斬撃が飛んできたではありませんか。わたくしは咄嵯に避けましたけど、わたくしの服が切れてしまいましたわ。

「あらあら、危ないですわね。マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

わたくしの手には大量の金貨が現れました。

「うおっ、なんだその量は!?」

「わたくしのスキルはお金を生み出すことが出来るんですのよ」

「なにぃ!?」

「さあ、どんどん行きますわよ!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

「うおぉーっ!?」

わたくしが生み出した大金によって、黒龍さんは埋もれていってしまいましたわ。

「ふう、終わりましたわね」

さて、わたくしは指名手配されているようですので国外逃亡しなくてはなりませんわね。幸い、この国の王女様は今わたくしを捕まえるのを諦めてくれたようで、追ってくる気配はありませんわ。

それにしてもあの王女様、とても醜い方でしたわね。わたくしがドラゴンから貰ったお金を横取りしようとしたんですもの。これからどうしましょうかしら? まずはどこかの国に行って、身分証を手に入れなければいけませんわね。

お金さえあれば何でも解決出来ますわ。わたくしはとりあえず近くの町まで歩いていくことにしましたの。

 

知らない近くの街に着き、わたくしは商人に話しかけましたの。

「別の国に行ってみたいんですけれども、どういう方法がありまして?」

商人のおじさんは困った顔で言いましたの。おじさんによると、この国から隣の国は馬でも1ヶ月かかるらしいですわ。そんなに時間がかかっていては、指名手配されてる身としては逃げられませんわね。どうしたものでしょうか……。

その時、一人の少女が声をかけてきたのですわ。彼女は綺麗で可愛くて、そしてなんとなく懐かしい雰囲気を持った女の子でしたの。彼女はわたくしにこう尋ねてきましたの。

「あなた、もしかしてリッチ子・ブゲンヤドですか?」

わたくしは驚きましたわ。なぜなら彼女、なぜかわたくしの名前を知っていましたの。わたくしはその疑問を口に出していましたわ。

「どうしてわたくしの名前をご存知なのかしら?」

すると少女は答えてくれました。

「私は異世界転生した者の一人です。それで、あなたにお願いがあるんですよ」

「わたくしに……何か頼みたいことがあって来られたんですのね」

「はい、そうなんです。私と一緒に来て貰えますか?」

「ええ、いいですわよ」

こうしてわたくしは彼女と旅をすることになりましたの。彼女はこの世界を救おうとしているそうですわ。魔王城は隣の国にあるらしいので都合がよいですわね。

「あなたのお名前はなんて言いますの?」

「私の名は……サクラと言います」

「では、サクラ様とお呼びしますわね」

「はい、リッチ子さん。よろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくですわ」

(それにしてもこの人、凄く可愛いですわね)

わたくしはサクラさんの顔をまじまじと見つめてしまいましたの。すると、

「あの、私の顔になにかついておりますでしょうか?」

「いえ、なんでもありませんわ」

「そうですか……」

ふふふ、少し照れている様子ですわね。わたくしは彼女に質問することにしましたの。

「ところで、あなたはどうしてこの世界を救うおつもりなんですの?」

「それはですね……私が今はこの世界の住人だからですよ。元の世界に戻りたくないわけじゃないんですけど、今はこっちの方が楽しいので、ずっとこのままでもいいかなって思ってるんです」

「まあ、そういう考えもあるんですのね。サクラ様は不思議な方ですわね」

「不思議、ですか?」

サクラ様はきょとんとした表情を浮かべましたの。

「だって、普通は勇者が魔王を倒して平和を取り戻すのが定番ですのに、あなたは勇者ではないのにわたくしと二人でこの世界の魔王を倒しに行くおつもりですのよね」

「はい、その通りです」

面白い方ですわ。わたくしワクワクしてきましたわよ。さあ魔王討伐に向かいますわよ!

「サクラ様のスキルはどのようなものですの?」

「私のスキルは……【スーパーパンチ】というもので、強いパンチを出せるというスキルです」

サクラ様は自分の手を見ながら言いましたの。強そうなスキルではありますけれど、サクラ様は一般人ですわ。わたくしは心の中で思いましたの。わたくしは、マネーパワーで金を操って戦うことが出来る。

金を消すことも出来る。

金を増やすことも出来る。

金を奪うことも出来る。

つまり、マネーパワーは最強のチート能力ですわ。わたくしはお金で出来た鎧を着ていますの。これなら、どんな攻撃でも防ぐことが出来ますわ。わたくしがいれば魔王なんてお茶の子さいさいへのカッパですわ!

 

わたくしとサクラ様は歩き続け、国境を越え、魔王城に到着いたしました。

「これが魔王城のようですわね」

「はい、そうみたいですね」

「早速、中に入りましょう」

わたくしとサクラ様は、魔王城に足を踏み入れました。

「誰もいませんわね」

「そうですね。静かで不気味な感じがします」

「そうですわね。油断しないように行きましょう」

わたくしたちは慎重に進みましたの。すると、突然大きな扉が現れましたの。わたくしは扉を押し開けてみることにいたしました。ギイィッ……バタン!! わたくしたちが部屋に入るとそこには玉座がありましたの。そこに一人の男が腰掛けていました。男は黒髪でした。年齢は二十代後半ぐらいに見えますわね。黒いローブに身を包んでいましたわ。男の手には魔導書のようなものを持っていて、そこから光が放たれているようでしたわ。

わたくしは警戒しながら、ゆっくりと前に進んでいきましたの。

「あなたさまが魔王ですの?」

「いかにも、我が名は魔王だ。貴様はなんだ?」

「私たちはこの世界を救いに来た者です」

「そうか、お前は勇者か」

「いいえ違います。ただの一般人です」

「そうか、勇者ではないのか。残念だな。勇者は殺しがいがあるのだが」

「私は勇者ではありませんが、この世界を救うため、この場にいるのです」

「世界を救うだと?笑わせるな。そんなことは不可能なのだ」

「不可能を可能にするのが、私たちの使命なのです」

「ふん、戯言を言うな。だが、まあいいだろう。せっかく来たんだ。俺と戦う権利を与えてやる」

「言うじゃありませんの!」

「お前は何者だ」

「わたくしは財閥令嬢リッチ子・ブゲンヤド!あなた様の資産を根こそぎ奪うものですわ!!!」

「はっはっは!面白い女だ!気に入ったぞ!俺の名はドラゴネル・ブラック・ドラゴンだ。」

ブラックドラゴン……」

どこかで名前を聞いた記憶がありますが、気のせいですわね。

「では、始めるか」

「望むところですわ」

「行くぜ」

ブォンッ!!

「なんですの!?」

わたくしは魔王様に攻撃を仕掛けられましたの。

「危ないですわね」

わたくしは咄嵯に金塊でガードして、攻撃を防御いたしましたの。

「へぇー、なかなかやるじゃん」

「お褒めいただき光栄ですわ」

「だけど、これはどうかな?」

「なんですの?」

魔王様は両手を前に出し、何かを呟きましたの。すると、手から炎が吹き出ましたの。

「ちょこざいなっ!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

わたくしは金を操り、魔王様の炎の攻撃を防ぎましたの。

「ほぅ、何度見ても面白いスキルだ」

「どういうことですの?」

「お前が倒したブラックドラゴン、あれは俺の分身だったのだ」

ブラックドラゴン、名前を聞いたことがあると思ったらやはり以前に会っていましたか。

「そうだったのですね、だからなんだと言うのですの」

「面白い……、ならば、これでどうだ」

魔王様はわたくしに向かって、魔法を放ちましたの。

「効きませんわよ」

わたくしは金塊で攻撃を防ぐことが出来ますの。

「それは、どうかな?」

魔王様はニヤリとして言いましたの。

「何が言いたいのです?」

「この攻撃は、俺が生み出したものじゃない」

「どういうことですの?」

「この世界に元々存在するものだ」

「何を言っていますの?」

「つまり、この世界のルールに則って戦っているということさ。俺はこの世界で生み出された存在だから、ルールに抗う存在ではない。しかし、君は違う。君はこの世界のルールの外の存在だ。つまり、君のスキルは通用しない。そして、この攻撃は防げないということだ」

「なるほど、そういうことですか。でも、わたくしにその攻撃は当たらないと思いますわよ」

「果たして、そうかな?」

「試してみるといいですわ」

「それなら遠慮なく行かせてもらうぜ」

魔王様の手から炎が出ました。

「くらえ」

ボゥワッ!!

「無駄ですわ」

わたくしは魔王様の炎を受けましたわ。

「なぜ効かない!」

「あら、こちらの世界のルールでも金は生きる上で最も重要なものなのではなくて?例えわたくしがこの世界の住人ではなくてもマネーパワーは不滅ですわよ!」

マネーパワーで守られた私は無敵ですもの。そんな攻撃ナンセンスですわよ!

「なんだと!」

「こちらのターンですわ!いきますわよ!サクラ様!」

「はい!」

「わたくしが動きを止めて差し上げますわ!!マネーパワー!!」

わたくしは金の力で魔王の動きを封じましたの。舞い散る金貨で魔王の視界も塞ぎましたわ!

「今ですわ!サクラ様!」

「分かりました!必殺!スーパーパンチ!!」

バキィッ!!

「ぐぁああああっ!!」

「やりましたわね!流石ですわ!」

「いえ、まだ油断できません。魔王はまだ生きてます」

「その通りだ。勇者」

「!?」

そこには無傷な魔王の姿がありました。なんですのコイツ……ゴキブリみたいな生命力ですわね!サクラ様は先ほどの攻撃で大分体力を使われた模様。やはり結局財閥令嬢のわたくしが魔王を倒すしかないようですわね!

「マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

「ははっ!また同じ技か?芸がないな」

「そんなことはありませんわ」

「ん?なんだ?急に体が重くなったぞ」

「ふふん!お忘れですの?私のマネーパワーはこの世界に存在する金、存在しない金、これから存在するようになる金、過去に存在していた金、それらの全てを操ることが出来るのですわ!」

「なっ!なんだと?だが、いくら金を増やそうと俺の体にダメージを与えられるわけではない!」

「甘いですわ!あなたはわたくしのスキルを甘く見すぎている!」

「なにを言って……ムッ!?」

「気付きましたわね」

「これは、俺の体の重さか!まさか貴様、俺の体の中に大量の金の粒子を送り込んだのか!?」

「正解ですわ!どうですか!わたくしのマネーパワーは!もう、あなたの体は金同様!あなたはわたくしの支配下ですわ!」「くそぉおおおっ!!!!」

「わたくしのマネーパワーは他人の金を全て奪うことも出来る……。この意味が分かって?」

わたくしは魔王に向かって手を伸ばしました。これでこの旅も終わりですのね。

ごきげんよう、魔王様!マネーパワー!」

『お金ちょうだい』

「ぐぉおおおおおっ!!!!」

わたくしの詠唱と同時に魔王の身体は金の粒子になっていき、やがてわたくしの手のひらの中に消えていきましたわ。魔王が完全に消えたと同時にわたくしの資金はおそろしいほどに増加しましたわ。

「終わった……」

わたくし、魔王を倒しましたのね。

「ありがとうございます!リッチ子さんのおかげです!」

「いえ、わたくしは何もしていませんわ。全てはサクラ様のおかげ」

「そんなことないですよ!私なんて何も出来なかったですから」

「謙遜なさらないでくださいませ。それにしても、これでやっと一段落ですわね」

「そうですね」

「街に戻りましょう。きっと魔王の配下のモンスターも消えているはずですわ」

「はい!」

 

わたくし達は廃墟と化した魔王城を去り、街の中に入りましたの。すると、街中の人々がわたくし達の元に駆け寄って来ましたわ。

「あなた方が魔王を倒してくださったのですか!?」

「すごい!流石です!あなた方が勇者様です!本当にありがとうございます!」

「やれやれですわね、いいえ違いますわ。わたくしは勇者ではありません。サクラ様こそが勇者様ですわ。」

「えっ、リッチ子さん何を言っているんですか」

「わたくしはしがない資産家ですわ。勇者はこの方だけ!ではさようならサクラ様!お達者でね!」

「リッチ子さん!?」

わたくしは人混みの中に紛れ、そのまま姿を眩ましましたわ。英雄として崇められるのも楽しいでしょうけれど、わたくしは金の力で自由に生きたいのですわ。勇者になってしまうと自由には生きられませんもの。

さて、魔王を倒したおかげでわたくしはこの世界の70%の資産を手に入れてしまったようですわ!さて、どう活用しようかしら。まずはわたくしが世界を支配出来るほどの大富豪になった事を世界中の人々に知らせる必要がありますわね!早速テレビに出演しますわよ!!

 

「はい!みなさまこんにちは!今週も始まりました!『ニュースの時間』!司会を務めさせていただきます!テアと申します!そして、ゲストはなんと!あの伝説の勇者様と魔王を倒したリッチ子・ブゲンヤドさんです!」

ごきげんよう

「リッチ子さん!今日はよろしくお願いしますね!それで、テレビの前の皆さんに言いたいこととは?」

「それはもちろん、わたくしが世界の70%の資産を手に入れたことですわ!この放送を見た世界の皆様にお伝えしたいことがありますわ!わたくしが世界の70%の資産を手に入れた意味が分かりまして?それは、全てのマネーゲームを制するためですわ!」

「なっ、なんですとーっ!!」

「世界にはわたくしの敵が多くいますわ!例えば某国の王女様がそうですわ。彼女のせいもあってわたくしは魔王と戦う羽目になりましたの。彼女はわたくしから莫大な富を奪い取ろうとしているのですわ」

「そっ、そうなのですか!?」

「はい。このようにわたくしから財産を奪おうとする人はたくさんいるのですわ。わたくしに敵対するものは全員金の力でいわしてやりますの。それがわたくしのマネーパワーですわ。それがマネーゲームですわ!」

「テレビの前の皆さん、これは大変なことになりました!お金が全てを支配する時代が来たのかもしれません!マネーパワー恐るべし!リッチ子さん、これからどうするのですか?」

「もちろんマネーパワーでお金を増やし続けますわ!マネーパワーは無敵ですの!」

「そっ、そうですね!マネーパワーがあればなんでも出来てしまいそうです……」

マネーゲームに自身のある皆様!ぜひわたくしと全財産を賭けたマネーゲームをしましょう!」

「おっ、お待ちください!リッチ子さん!マネーゲームとは一体どういうことでしょうか?」

「わたくしとあなた方のお金を賭けて戦うということですわ。マネーゲームのルールを説明しますわね」

【ルール】

1、参加者同士でマネーゲームの勝負を行う。

2、マネーの受け渡しは直接手で行う。

3、マネーは100万円単位でしか取引出来ない。

4、マネーゲームで勝った方は負けた方の全財産を奪う事が出来る。

5、マネーゲームに挑めるのは各人1回ずつのみ。

6、もし、途中で負けを認めた場合、その人物はその時点で財産を全て失う。

7、マネーゲームの勝敗判定は、残り財産の金額が大きい方が勝ちとする。

「以上ですわ。では皆様の挑戦お待ちしておりますわ。ではごめんあそばせ!」

わたくしはそう言って、テレビ画面の前から消えましたわ。

さて、次の相手は誰なのでしょうか。腕が鳴りますわね。わたくし、この世界でも財閥令嬢として君臨させていただきますわよ。

 

【次回予告】

魔王を倒した果てに全世界の70%の資産を手にし、世界中の資産家に宣戦布告したリッチ子・ブゲンヤド。しかし、リッチ子の前に立ち塞がるのは、リッチ子と同じく現代から異世界転生した男、カムイ。果たしてリッチ子は勝てるのか!?

次回、「マネーウォーズ ~最強最悪の金の力vsマネーパワーと金の知恵」

ついにわたくしの番ですわね。さあ、マネーゲームを始めますわよ!

ファストフード店に入るゾ

 

 

フツーのブログでも書こうかなと思いました。

 

著名だけど入ったことのないファストフード店っていうのがある。

私の実家には特殊ルールがいくつか存在していた。そういう家ごとの特殊ルールって多かれ少なかれありますよね。あなたの実家にもありませんでしたか?そんな実家特殊ルールの中の一つに、「K○Cとロッ○リアには入るな」というものがあった。

 

これは宗教的なアレとかではなく、単純に両親の味覚の問題である。両親の中には「ファストフードチェーン店美味さランキング」が明確にあり、彼と彼女はそれを完璧に共有していた。夫婦ってすごいね。で、その「ファストフードチェーン店美味さランキング」であるが、

モ○>>(越えられない壁)>>マ○ク>>>>>>(中略)>>>(越えられない壁)>>>(謎の憎悪)>>>K○Cとロッ○リア

というものだった。お前らK○Cとロッ○リアになんかされたんか?あ、「他のファストフード店どこ行った?」と思う都市圏出身の方もいるかもしれないんですけど、10~25年前にあった地方都市のファストフード店なんてこんなもんです。バー○ーキングとかサ○ウェイとかあるわけないじゃん。

そんな両親の元に産まれた僕は、幼少の頃からK○Cとロッ○リアへの呪詛を聞かされて育てられてきたのである。多分幼稚園とか小学生とかの時、ロッ○リアの前を通って「食べてみたい」と言ったことがあるのだが、吐き捨てるように「まずい!」と言われてマジでビビった記憶がある。子供ながらに「そこまでか……?」と引いた。なんかあったんか?ねえ、カウンセリング受けた方がいいんじゃない?心配になってくるわ。

そういう訳で、僕は30歳になるまでロッ○リアのハンバーガーを食べたことがなかったし、K○Cのチキンは5歳くらいの時にお友達の家で1回食べたきりだった。親元を離れてもなんとなく食べなかった。まあ近所にロッ○リアもK○Cもなかったというのも大きな理由なんだけど、教育とか生育環境とかって怖いもので、見かけても入ろうという気にならなかったのだ。マ○クとかモ○でいいかな、ってなっちゃうんだよな。

 

しかし、ある日の俺に電流走る──!あれはコロナワクチン接種の1回目の日、あれ、2回目だったっけ。ごめん、忘れたわ。でもとりあえずコロナワクチンを接種した日である。夏の暑い日に接種会場まで行って、プチッと注射を打ってもらい、会場近くの駅に到達した。会場の最寄り駅周辺は結構栄えていて色んなチェーン店が軒を連ねているのだが、その中のひとつにロッ○リアがあった。

「ロッ○リアね……。1回も入ったことないし食べたこともないわ。不味いって母親の人が言ってたな……。しかし、自分で食べずにそれを盲目的に信じて生きていくのは果たして善いことなのだらうか……。」

「……か…?……かい?」

「だっ、だれ!?!?」

「ロッ○リアのハンバーガー、食べるのかい?食べないのかい?どっちなんだい?」

「!!!……たーべー……る!!!!」

「パワー!」

脳内なかやまきんに君!脳内なかやまきんに君だ!脳内なかやまきんに君よい子の味方!何故かというとパワーだから!シャオラ!勝利!!俺は……俺は……今から人生で初めてロッ○リアにアムロじゃないけど行きまーす!アムロじゃなくても行くときは行くんだよオラァ!!

そんな感じで俺は光速でロッ○リアに詰め寄り、まずは店の前にあるメニューをガン見する。入ったことがない店、しかもカウンターに並んで注文するタイプの店に入る場合は、こういう事前準備が重要なのだ。あれは学部生の頃、初めてサ○ウェイに行ったとき、「(この中で)苦手な野菜はありますか?」と聞かれて「えっ、キュウリが嫌いです!」と純粋に自分が嫌いな野菜を答えてしまった俺はもういない。この厳しいファストチェーン店ワールドでは、「いやそんなん知らんですけん!」という言い訳など通用しないのだ。

メニューを見てロッ○リアの様々を把握した俺は光速で店内に入り、お持ち帰りでベーコンチーズバーガーのセットを頼む。もう誰も俺を止められない。光速になっちゃったから仕方ない。俺の心は今や光の速さなのだ。そしてそのままの勢いを保ったまま電車に乗り、家に帰り、手洗いなどを済ませたのちハンバーガーを口に運んだ。

 

は?美味いやん。

 

なんか、こう、私はバカ舌である。お値段高めのとんかつ屋に入ってヒレとロースの両方のセットを頼んでも、「どっちがどっちやコレ」という問いが食べ終わった後も未解決問題として残り続けるレベルのバカ舌である。なので詳細な飯の感想が言えず、「美味しい味がしてよかった」か「好みの味じゃなかった」のどちらか一方に感想が収束してしまうのだが、とにかくこれは「美味しい味がしてよかった」のやつやんけ。誰!?僕にロッ○リアのハンバーガーは不味いって言ったの誰!?俺の母ちゃんだよ!!ママ、救いはないんですか!?

ロッ○リアのハンバーガーの感想について実際に食べて調べてみたところ、ロッ○リアのハンバーガーはフツーに美味いということが分かりました。どうでしたか?みたいな情報量のないサイトみたいな感じの結論である。でもまあやっぱ自分で調べないと分かんないし、他人からの謎情報に支配されるのはよくないですね。この支配からの卒業をしていけ。それ以降、ロッ○リアには病院帰りにもう一度行った。やっぱね、家の近くとか、出先から帰宅までの道に店舗にないとなかなか行けないですよね。

 

しかし、私にはもうひとつ課題が残されていた。そう、K○Cである。

基本的に私は食に対するこだわりがゼロ、というか寧ろマイナスである。なのでこう敢えて何か食いに行くぞみたいな欲求が基本的にない。つうか飯を食うのってめんどくさいとしか思っていない。そんな食への執着を棄てた悟りの境地に近い人間なので、「よーし、今日はK○Cに行くぞ~」みたいな気持ちにならないわけである。ものは言いようだな。

そういうわけでロッ○リア電撃訪問から半年以上経ってもK○C襲撃事件を起こさなかった小市民ばあちゃんなのだが、まあこれを書いていることから推察できるだろうけど、この間ついに入店したのだ、あのK○Cに。クリスマスの時期は妙にテンション上がってるK○Cに、である。

よく使う駅の地下に喫煙所があって、私はほぼ毎回そこに寄るんですけど、その日は普段と違うエスカレーターで地上に上がった。本当になんとなく。そうしたらエスカレーターの目の前にK○Cがあった。K○C、現前である。「あれ、こんなとこにK○Cあるんだ。今日は茄子の揚げ浸ししか食べてないからこの機会に買って帰ろう!」と思って列に並ぶ。さて予習だ、と思って看板に貼ってあるメニューを見る。

全部同じじゃね?

いや、なに、え、どれ頼めばいいの?なんで2000円もするの?アッ量が多いのか!?ハンバーガー!?ハンバーガー売ってんの!?いやチキン食わせろよK○Cってチキン屋さんじゃないの!?待ってくれ、1人用で一番シンプルなのはどれ?これ?この、これ!?どれ!?!?

とアワアワしていたらすぐに順番が来てしまい、メニューの十全な予習が出来ないまま店員さんの目の前に連れ出される。波乱の予感だ。思考回路はショート寸前を通り越して只今絶賛ショート中である。子供の頃「思考回路」じゃなくて「思想回路」だと思っていた。どんな回路だ。

店員さんの笑顔にビビりながら、カウンターに置かれたメニューをウロウロした眼球で捉える。やっぱ全部同じじゃねーか!

「あ、お、オリジナルチキ~ンのやつ…を?」

「ボックスとセットとございますが……」

「ボック……セ~???んん???」

「???」

「???」

よーし、いい子だ落ち着け~?ボックスってなんだ~?ボックスとセットの差異とは~?店員さん、明らかにヤバいヤツを見る目をしている。落ち着け、もう一度メニューを見るんだ、そして注文しろ。

ということで素早くもう一度メニューを見る。眼球をぐりぐり動かしてそれっぽいのを見つけたときの私の感動分かる?「アッ、セット!セットで!」と感動にテンション上がる私を「ああ、セットですか……」と苦笑いで見ている店員さんが「なによこの人、K○Cにも来たことがないのかしら?」みたいな目をしていたので、「なんですの!?わたくしお嬢様、おファストおフード店であらせられるおK○Cなんて今まで一度も来たことがございませんのよ!?」とブチ切れ半狂乱お嬢様になりそうでしたけれども、わたくしお嬢様ですのでグッと堪えましたわ。わたくし精神的貴族でございますので、その程度ではブチ切れ半狂乱お嬢様にはなりませんことよ?一昨日いらっしゃいまし!!!(ブチ切れ)

お嬢様になりながら何とかオリジナルチキンセットを手に入れ、電車を20分ほど待って、ボックス席に座る。

手にはK○Cである。

25年前の味の記憶なんてほぼないので、K○C初体験に等しい。テンションもあがる。斜め前に座ってる女の人がじっと見てきたので、その人に「これから四半世紀ぶりにK○C食うんすよ」と自慢したくなった。ちなみに帰ってる最中こけた。冬にこけるって人生における最悪な出来事のひとつ。

 

さて、K○Cだ。包みを開けると、ポテトとジュースと薄い紙に包まれたチキンが入っていた。「あ、これCMでよく見る形のヤツ~」と思いながらまずはドラムにかぶりつく。

美味いが。

いや、美味かったよ?美味かったんだけどすっかり冷えちゃってて、なんかK○Cのチキンが本当に持っているチカラがイマイチ分からなかったんだよね。アチアチのまま食べられる分、ファ○マのプレミアムチキンでよくね?になってしまうというか。値段同じだし。もうひとつ入ってたのが多分リブで、ドラムよりリブの方があっさりしてて好きだった。美味しい味がしてよかったです。ばあちゃんはあっさりした肉が好き。脂身とかサシとか要らないんや……。

注文もワタワタしちゃったし冷えててよく分かんなかったしで、ほぼ初K○Cは不完全燃焼で終わっちゃった。ふふ、しかしこういう不完全燃焼もまた楽しいものだ。次は店内でアチアチ状態のやつを食べてみようとニヤニヤしながら思う。今度行くときは「K○C?よく知らないけど100億回は行ったぜ」みたいな顔して注文しよう。強者の顔をもってして行くぞ。そういうことを考えながら骨の後始末をしていたら、ロッ○リアとK○Cに入った達成感が押し寄せてきて感動してしまった。その程度で何を言ってるんだコイツと思うだろうが、ファストフード店に入るとか、おみくじを引いてみるとか、そういう些末な事柄が重要な意味を持つこともある。奇妙だね。ばあちゃんの奇妙な事実 part71だね。

次は何をしようかな、と考える。何でも出来るぜ、金さえありゃあな!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ちいかわ昭和歌謡

 

 

東京に住んでなくてよかった
東京に住んでたら
ちいかわの店やイベント事が
星の数ほどあって
その度に走って駆けつけて
きっとあたしは震える手で
ちいかわに札を渡していた
東京に住んでなくてよかった

東京に住んでたら
あたしはきっと
ぐしゃぐしゃになった1000円札を
何枚も
何枚も
ちいかわに渡していた
そして泣くちいかわを抱きしめて
寒い部屋にひとり
ひとりきりだった
東京に住んでたら……

人はきっと笑うだろう
30にもなって
金を貢ぐことでしか
愛を伝える方法を知らないあたしを
馬鹿な女ねと
東京都民に後ろ指差されて
それでもあたしは
精一杯のおしゃれで
昔に買ったコートを着て
ちいかわに
ちいかわに泣いてほしいから
お金を渡していたんだろう

ちいかわの泣き顔で
あたしは束の間
あたたかくなれるから
タバコの火で穴が空いたコートも
新品みたく感じられるから
だからあたしは
東京にいるあたしは
ちいかわのために
あたしのために
お金を渡して
冷たいちいかわの人形を
自分の体温で温めて
冷えた部屋の隅っこで
あったかいねと笑うのよ

 

 

 

 

 

ちいかわへの気持ちを詩にしたので誰か曲を付けて下さい。

 

 

 

 

 

アイドルはパーフェクト☆イリュージョン

 

 

長いブログ書くのタリーから、たまに短めのやつをぶっこむことにした。

ブログ書こうかな、と思って書いても自分の中のオモシロの水準(凡人なりにそーゆーのがあったりする)に到達してなくてお蔵入り、みたいなのがハチャメチャに続いているので、短くサラッと書くタイプのやつがあってもええじゃろみたいなスタンスで生きることにした。

 

それはそうと、昔々、女神様がいたんですよね。

「すわ、怪しい宗教の話か!?」と身構えたそこのあなた、大丈夫です。怪しくないです。宗教の話ですが怪しくないです。大丈夫、何も怖くないよ。お金とか…とらんから……。

女神様は現人神でして、美を司る神でありました。我々の世界が美しいのはその女神様がいらっしゃるからであり、色彩があるのは女神様からのお恵みだったのでありました。美という名の愛を我々に平等に与え給う女神、それがNS様でありました。

イニシャルにしているけれど不安だ。唯ぼんやりとした不安。芥川かよ。死ぬな、生きろ。

昔の私は聖様(と彼女を呼んでいた)を信仰する宗教に入っていた、というかそういう宗教を創立していた。聖様がいるから世界に美が存在するのだ、聖様こそが美のイデアなのだと固く信仰していた。聖様の写真集が出たら即購入し、聖様が表紙のファッション誌も即購入し、聖様がご出演なすった舞台の前の方の席を取り、聖様がご出演なすった映画を見るためならば他県に日帰りで飛び、その御姿が背負う後光に穢れた眼を焼く陶酔に浸り、聖様のお演技のその、ユ、ユニークさ?あの、はい、これ以上はやめます、はい、そして毎日のInstagram拝見を参拝と呼び、現人神たる聖様と同時代に生まれることの出来たこの喜びを歌い、この世に美しさを恵んで下さった聖様のお慈悲に手を合わせ、美のイデアという人間ごときが見られぬものを見せてくださるその奇跡に、引くな、待って、行かないで。信教の自由やぞ?日本国憲法第20条叩きつけられてえかオォン!?憲法解釈バトルすっか!?!?

当時の僕は本当の意味でfanaticだった。彼女は僕の神様だったのだ。しかし女神は神ではなかった。

聖様は結婚したのだ。

 

 

これがかの有名な「人間宣言」です。みんな聞いたことあるよね?社会のテストでるから覚えときな。

人間宣言が訪れた日のことは断片的に覚えている。まあ昔の話だからね。とにかく荒れて荒れて荒れまくり、女神を人間に堕とした(という表現は明確に間違ってるんですけど、当時の私は本気でそう思っていたんですよ。ぁたし、バカゃから。。。)相手の男性を呪いに呪い、グールドのゴルトベルク変奏曲聴きながら大泣きした。多分なんかグールド聴いて落ち着こうとしたんだと思う。アホな人間なりになんとかクールでいようとアホな努力をしたアホな可愛さを受け取れ。無理ですかそうですか。

だって神は「この世の全ての人間に等しく愛を注ぐ」というのを本質として持つ存在の筈だ。特定の人間を贔屓なんてしない筈だ。そんなの神様じゃない。なのに聖様は1人の男に特別な愛を注いでいるのだ。すわ人間!神じゃねえ!じゃあ聖様はなに!?神の本質が欠けてるの!?essence precedes existenceじゃないの!?ねえ答えてよ!!本質は存在に先立つってお前言ってたじゃん!!!と論文を前に慟哭する存在が俺だ。昔は本質主義の極北に住んでたんだよね、ばあちゃん。今では本質は存在に先立つってラディカルすぎるだろって思ってる。

人間宣言ショックはその後数ヶ月続き、数年間私は彼女のインスタを見ることすらできなかった。神は死んだ。うん、神は死んだ。私の神は死んだのだ。Mein Gott ist tot. 私の神は死に、今では人間としてこの世を生きている。

 

問: 僕がここから得た教訓とはなにか?

 

答: 相手は幻想だと理解した方がいい

 

簡単な話で、単純な教訓である。僕は聖様が現実を生きる人間であると理解しようとせずに、勝手な信仰を押し付け、幻想と現実を混同し、そんで勝手に精神的死を迎えた。ここでそんな僕にぴったしのBGM。

www.youtube.com

You were so perfect (In a modern ecstasy). You were a perfect illusion. 知ってるかい?ガガ様はいつだって正しい。たぶん。

 

芸能人とかそういう画面越しでしか知らない存在って、芸名という幻想を被ってると思った方がいい。その中にいる生身のその人のことなんて私たち、知ることができないし、知ってるとか死んでも思わない方がいい。知ってると思い込んでる人を見ると(たまにいる)、少しゾッとする。いや、それは単純に双方にとってとても危険だから。彼女ら/彼らは理想という名の幻想を売っているわけであって、その奥にある現実を売っているわけじゃない。それは売り物ではないし、絶対に売っちゃいけないものだし。そして同時に、こちら側もハナから売っていないものを買ったつもりにならない方がいい。現実と幻想を混同すると、遅かれ早かれ精神的に死ぬことになる。俺は理解した。まあなんか僕の場合は特殊な事例な気がするけど、アレ完全に宗教だったし。でも似たようなもんだ。過去の痛みから学んでいけ。待てよ、本当に似てるか……?まあいいや。

だから目の前の人間は理想をふりまく幻想だと理解した上でなお推すんだ、僕は。

ごっこ遊びを真剣にやっているんだ、僕たちは。ウォルトンかよ。

 

数年前から僕はTWICEちゃんを推してるんですけど、彼女達を見つつ「幻想を見せてくれてありがとう……」と感謝して手を合わせるという老後みたいな人生を送っている。ああ尊い。皆可愛くて踊りが上手くて歌がうまくて性格がよくて可愛くて可愛い。ボキャブラリーの貧困?不完全な言語などどっかに飛んでいけ。全部言語で表現しろなんて、広大な海を桶で全部汲めって言ってるのと等しいわ。

TWICEちゃんたちは彼女たちの現実で何が生じていても、舞台では私たちのために笑顔で踊って歌ってくれる。それを思うだけで私は感動して泣けるんですよ。私たちに完全な幻想を提供するために、彼女たちは微笑んでるんですよ……、グォッグォッ。それが彼女たちのお仕事だと分かった上でも、仮に全部が作り物だったとしても私は感動できる。僕はその微笑みが商業的・資本主義的微笑みであっても、「これが私の本当の姿だよ」と言って差し出されたものが嘘であっても構わないのだ。だからなんだっていうんだ、こっちはそれすら呑み込んだ上でごっこ遊びに興じているのだ。幻想を共有して、そのフィクションに乗っかって遊んでるんだから、そこら辺は理解した上で言葉にせずに遊ぶのがマナーってもんだ。ジャパニーズ・粋ってもんだ。おままごとしてる時に「でもお前おかあさんじゃないし、てかお前ただの子どもじゃね?」とか言うヤツいるか?いたら連絡してくれ。謝るから。我々はごっこ遊びだって本気で楽しくやれるんだ。ファンとアイドルの役を演じてる俺たちだって楽しいに決まっているだろう。

もっと言うと、アイドルという役を演じていない彼女たちを私は推していない。推していない、というより推すことって不可能じゃね?と思っている。私が見ているのは例えばミナやジヒョというアイドルで、現実に存在する名井南さんやパク・ジヒョさんではないからだ。私はアイドルとしてのミナやジヒョのことはよく知っているけれど、名井南さんとパク・ジヒョさんのことは殆ど何も知らない。知らない人のことを推すことなんて出来なくない?つまりはそういうことよ。

もちろんミナやジヒョが好きだから、名井さんにもパクさんにも幸福になって欲しいけれど(他のメンバーも含めて全員幸せになって欲しいよね……ラヴ……)、それ以上は特に求めていない。本名の生身の彼女たちには、他の人間同様、自分が幸福だと思える形で自由に生きて欲しい。彼女たちの現実は売り物じゃないから。それは商品としてハナから用意されていないから。僕は買えないタイプのヤツだから。畢竟、僕たちは幻想しか推せない。我々に用意されているパッケージは最初から幻想だけで構成されている。アイドルは自分が被った表層の膜だけを売っていると思ってる。あの、ほら、湯葉みたいな感じの、あの、膜だけがね、売られてるの。アイドルは湯葉だった……?湯葉、美味いよね。ばあちゃん、湯葉、だ~いすき。

豊穣の海からあがればそこは荒れた海岸線。ハレとケ。幻想と現実。薄いスクリーンで隔てられた向こう側。その断裂は超えられない。本ごっこ遊びにおいてそれを超えようとするのは無粋だし、ルール違反ですらある。私はファンの役、貴女たちはアイドルの役。お互いの役を演じるのを楽しんでいる。目の前のパーフェクト・イリュージョンを本気で愛おしんで、そのパーフェクト・イリュージョンを本気で推していく。

それが人間宣言をサヴァイヴした今の僕にとっての推し活観である。

 

人間宣言……、本当に大変だったんですよ……。

ていうかそんなに短くならなかったわ、ごめん。うけぴよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ばあちゃん、腹痛の巻

 

 

またもや久々のブログ、というかなんつうか久々という概念が水を極限まで吸ったスポンジ生地みたくぶよぶよになるレベルで久々過ぎて、久々という言葉の持つニュアンスや意味合いが薄れる程度に久しい。

みんな元気ですか。私は元気ではない。何故か。月経だからである。月経とはなにか。なんか1週間くらい股から血が出続けるアレである。

 

この間精子が怖いという内容のブログを書いたから今度は卵子について書こう、みたいな実生活において全く役に立たない謎バランス感覚を持っているため、卵子について本気出して考えてみたわけなんだが、特に卵子について何の感慨もなかった。なんかでかくてまるくて1ヶ月に1個出てくる細胞ォ……という事実があるよな、で終わる。なんなんだよ全く。そんな感じで卵子については何も気持ちがないのだが、卵子が飛び出す関連でモチモチになった子宮内膜が体外排出される月経というのがありますね。月経については文句しかないんですけど私。

マジで人類における最たる設計ミスでしょ月経。制度設計どうなってんの。何を思ってアンタ、よりにもよって1ヶ月のうち1週間くらい股から血が出続ける設計にしたんですかね。つうか股から出血し続けてんのに生理的出血で片付けてええんか?普通出血したらテンヤワンヤですよ。私はストレスがすぐ胃腸にクる女なので数年前に胃に穴が空いて血を吐いた事があるんですけど、その時ちょっとしたパーリナイでしたよ。吐血やんけ!みたいな。すわ沖田総司か!?みたいな。股から血が出て、しかも1ヶ月の4分の1も出血し続けてんだぞ。出血大サービスかよ。閉店でもすんのか。閉店してわしは死ぬんか!?!?

いや、いちゃもんだって分かってるけど。分かってるから一旦黙りますけど、それにしてもどうかとは思う。あの血がどぼりと出る感覚には未だに慣れないし、私は血の量が多いから、いやまあでも股から血が出るだけならいいですよ最悪。最近は質の良いナプキンとかタンポンとかありますしさ。そこになんで腹痛だの腰痛だの吐き気だのといった負のオプション付けたんだっつう話なんですよね。

 

と、ここまで書いて放置していた。何故かというと腹痛が酷くなり寝込んでしまったからである。なんか凄い痛いけど、なに?生理痛?しかし痛いところが違うよなーと思い寝転び続ける。

ものすごく痛い。

身体を動かすと痛いので動けない。呼吸をすると痛いので、息をものすごく浅くする。背中まで刺されるように痛い。レイピアを持ったコビトさんを300人ばかし呑み込んだ巨人みたいな気持ち。腹と背中が痛過ぎて手に汗握っていた。スペクタクル超大作映画かよ。日本よ、これが腹痛だ。そんなこんなでハアハアハァハァと宮◯明ばりに息をしていたわけだが、3時間経っても痛いもんだから鎮痛剤を飲んでみる。生理痛関連なら痛みがやむはずじゃもんね!30分経つ。痛い。1時間経つ。ずっと痛い。

これやばくね?

というわけでとりあえず救急病院に行こうかなとマスクをつけ、財布とスマホと腹を抱えて玄関に行ってみたのだが、そこで痛みで動けなくなる。おめえ死ぬんか?メメント・モリ・モリ・みんないつか死ぬ。死ぞい!三段論法!こういう時どういう顔したらいいのか分からないの。笑えばいいと思うよ。痛いのに笑えないわよシンジくん!エバーに乗りなさい!みたいなカオスな脳内をかき分け、理性くんを引っ張り出す。理性の光。ル、ルミエール……。

理性1「救急車呼べば?」

理性2「いや腹痛で呼んでいいの?」

理性3「ヤバい病気だったら困るよねー」

理性4「サイレンがさあ、近所迷惑がさあ」

理性5「ggrks」

理性6「とりあえず病院には行け」

理性7「呼んだとして、救急車が本当に必要な人が他にいたらどうするん?」

侃侃諤諤の理性くん達が頭の中でフィーバーし、じゃあそろそろ二次会行く?みたいなノリになってきたので一旦ストップさせて理性5に従ってみる。いや、救急車さっさと呼べよと思った人いると思うんですけど、痛くて判断能力低下してるし、腹痛で呼んでいいのか分かんなかったし、なんか他のよりヤバい状況で困ってる人がいたらまずいよなという変な真面目さがあり、マジで呼んでいいのか分からなかった。というわけでポケットからスマホを取り出して「救急車 呼んでいいか」と検索欄に打ち込む。すごいアホっぽい検索ワードである。「救急車 呼んでいいか」でググった事ある人あります?俺は廊下に倒れ込みながらググった。真似するな。さっさと救急車を呼べ。

ググりました。結果です。救急安心センターというのがあるところにはあるという情報が出ました(ばあちゃんが住んでる県にはありました)。地域によるらしいですが、専門家が24時間体制で相談に乗ってくれるらしいです。困った時はとりま専門家に相談が信条のばあちゃん、とりあえずそこにかけてみる。看護師さんが出てくれました。

僕「スミマセェン、オナカ、オナカイタクテェ」

看護師さん「ひゃあ」

まあなんか会話等は省略しますけど「自分で行けそうなら近くの救急病院に連絡して行きな。動けなかったら救急車呼びな」という凄いなんていうか、「そりゃそうっすよねー」という模範解答に行き着いた。コレ以外答えようがないよな、そりゃ。俺だって腹痛い人に「どうしたらいいの?」と聞かれたらそう答える。ごめんね、ありがとう。

 

というわけで専門家による「救急車呼んでもいいんじゃね?」という免罪符は手に入れたわけだ。しかし俺はそこから更に考える。ゥチゎ哲学研究者ゃから(全く関係ない)。

本当に呼んでいいのか?

本当に、本当に呼んでいいのか?腹痛で?ここら辺から痛みで意識がボワボワしてくる。半分しか意識が働いてない感じ。経験則的に気を失うニ歩くらい手前の状態である。腹痛で救急車呼ぶ?マジ?いいの?ちょっと待ってこれ。なんか、ええ?というわけで検索結果を更に見てみる。あーなんかー救急車呼ぶか判断するアプリあるー。ダウソだあっつってアプリのダウンロードをする。何度かパスワードの打ち間違いをした後、ダウンロードされたアプリを開いた。ここら辺のことをあんまり覚えてないんだけど、救急車は脳梗塞っぽいとか呼吸がないとか、なんかそういう本当にヤバい時しか呼んじゃダメなんだなあみたいな感想を抱いたことだけ覚えている。今思うに、そこまでヤバい状況ならアプリを使わずに皆即救急車呼ぶと思うんだけど。なんだったんだあのアプリ。

閑話休題、よーし、じゃあとりま自分で行けそうならタクシー呼んで病院行くぞぁ、と思ったんだけど、痛すぎて2、3歩しか歩けない。

理性n「あ、だめだコイツ」

理性n+1「もうゴールしていいよね?」

というわけで119に電話である。ふえぇ、ぽんぽんあいちーなのー、たちけてきゅれ〜と言ったら「今から行くから、ドアの鍵開けて飲んだ薬だけ用意しときな」と言われて電話が切れる。スパダリか?玄関に五体投地みたいなポーズで座り込んでいたらサイレンの音が聞こえてくる。ドアが叩かれたのでなんとかドアノブを回す。人々がいる。人に支えてもらいながらなんとか救急車に乗る。これが…助け……。

救急車に乗るとか初めてだったから、色々覚えてたらいいんだけどね、あんまり覚えてないんですわね。痛すぎて。痛みとの戦に国力の8割くらいとられてたので。とりまその場で救急隊員さんが病院に連絡し始めて、最初の病院には断られていたのは覚えている。私ばあちゃん根が真面目なので、これが続くのがたらい回しという社会問題であるかと痛みの中で考えていた。救急車は受け入れてくれる病院が見つかるまで発車しないみたいで、その場で動かない。あれまぁ。私は二軒目の病院が受け入れてくれたからよかったけど、「え…マジ……?放置されるん……?」という絶望感がすごかった。一回断られただけでこれだったので、本当にたらい回しにされた人とその場にいた救急隊員さんの絶望感は計り知れないものだろう。これは本当によくない。

そんでなんか気付いたら病院に着いてて、血液取るねと言われて、気付いたら点滴を受けていた。ちゃんと意識はあったんだが(お医者さんや看護師さんと何か会話した記憶はあるので)、痛みとの戦いに集中しすぎていてあんまり覚えてない。アレ一体なんの点滴だったんだろうな。しかし痛い。痛みである。私は痛みに強い自負があるのだが、臍の上を押されると呻いてしまう。グエー触診は仕方ないですねー!simple2000シリーズ ザ・医療!ここら辺で心を憎み始める。心が!俺に心があるから!心があるから痛いんだ!俺に心があるばっかりにこんな酷いことに……!これが……心か……!みたいな事を延々考えていた気がする。ウル◯オラかな?

なんか後はCTスキャン取って、じゃあ痛み止め打つねーとなり、プラスで痛み止めを点滴され、痛みがグングン引いていく。流石点滴、効きがものすごく早い。ここから記憶がはっきりしてきた、気がする。なんか痛みとの戦いで疲れすぎてボーっとしてたから、記憶の前後は普通にありそうだけど、よく覚えてないというのはない。「多分胃に穴が空いてるんじゃあないかなあ、胃カメラを飲みにまた来週来なよ」と言われる。ちなみに胃の穴は胃カメラを飲まないと分からないらしいから、あくまでも予測である。胃に穴が空く、か……。前も空いて吐血したことあるしね……胃の穴……。胃の穴ってなんだよ……。

というわけで少し休ませてもらい、薬をもらい、お金を払い(CTスキャンの関係なのか14000円くらいかかりました。仕方ないですね。カード払いできてよかったです)、午前4時前くらいに病院を出て、丁度通り過ぎたタクシーを拾って家に帰ったのだった。胃ですか?普通に今も痛いですね。貰った胃薬と痛み止めのおかげか「いたいんですけど」くらいの鈍痛には変化したけど。

 

しかしまさか救急車を呼ぶとはね。警察は夜中連続チャイム鳴らされ事件(?)で呼んだことがあるので、あと消防車を呼んだらコンプリート(なんのだよ)になってしまったのだが、消防車は絶対にマジで一生呼びたくないです。火事怖いもの。地震雷火事親父だもの。

だが、こういうことがあると、医療従事者の人本当にありがとうになる。ばあちゃんは身体弱々なので、普段から医療従事者の人たちには結構お世話になっているのだけれど、マジでヤバくてひとりでどうしようもない時に専門家が即助けてくれるというのは本当にありがたいものである。といいつつ、何か腹痛で救急車呼んでごめんなさいに今もなってるし、看護師さんにも謎に謝ってしまったし、なんか、本当にごめんである。でも凄い痛かったのォ!!動けなかったのォ!!あたいだって動けてたらタクシー呼んで自分で救急病院行ったもん!!トトロいたもん!!!みんなも健康には気をつけてトトロを探そうね!!!

 

 

今昨日書いた部分を読み返したんですけど、胃の穴について言及してましたね。壮大な伏線回収か?すごーい、君は無意識のうちに伏線回収できるフレンズなんだね!嬉しくないわ!