クッキーは焼かない

クッキーは配るもの

ファストフード店に入るゾ

 

 

フツーのブログでも書こうかなと思いました。

 

著名だけど入ったことのないファストフード店っていうのがある。

私の実家には特殊ルールがいくつか存在していた。そういう家ごとの特殊ルールって多かれ少なかれありますよね。あなたの実家にもありませんでしたか?そんな実家特殊ルールの中の一つに、「K○Cとロッ○リアには入るな」というものがあった。

 

これは宗教的なアレとかではなく、単純に両親の味覚の問題である。両親の中には「ファストフードチェーン店美味さランキング」が明確にあり、彼と彼女はそれを完璧に共有していた。夫婦ってすごいね。で、その「ファストフードチェーン店美味さランキング」であるが、

モ○>>(越えられない壁)>>マ○ク>>>>>>(中略)>>>(越えられない壁)>>>(謎の憎悪)>>>K○Cとロッ○リア

というものだった。お前らK○Cとロッ○リアになんかされたんか?あ、「他のファストフード店どこ行った?」と思う都市圏出身の方もいるかもしれないんですけど、10~25年前にあった地方都市のファストフード店なんてこんなもんです。バー○ーキングとかサ○ウェイとかあるわけないじゃん。

そんな両親の元に産まれた僕は、幼少の頃からK○Cとロッ○リアへの呪詛を聞かされて育てられてきたのである。多分幼稚園とか小学生とかの時、ロッ○リアの前を通って「食べてみたい」と言ったことがあるのだが、吐き捨てるように「まずい!」と言われてマジでビビった記憶がある。子供ながらに「そこまでか……?」と引いた。なんかあったんか?ねえ、カウンセリング受けた方がいいんじゃない?心配になってくるわ。

そういう訳で、僕は30歳になるまでロッ○リアのハンバーガーを食べたことがなかったし、K○Cのチキンは5歳くらいの時にお友達の家で1回食べたきりだった。親元を離れてもなんとなく食べなかった。まあ近所にロッ○リアもK○Cもなかったというのも大きな理由なんだけど、教育とか生育環境とかって怖いもので、見かけても入ろうという気にならなかったのだ。マ○クとかモ○でいいかな、ってなっちゃうんだよな。

 

しかし、ある日の俺に電流走る──!あれはコロナワクチン接種の1回目の日、あれ、2回目だったっけ。ごめん、忘れたわ。でもとりあえずコロナワクチンを接種した日である。夏の暑い日に接種会場まで行って、プチッと注射を打ってもらい、会場近くの駅に到達した。会場の最寄り駅周辺は結構栄えていて色んなチェーン店が軒を連ねているのだが、その中のひとつにロッ○リアがあった。

「ロッ○リアね……。1回も入ったことないし食べたこともないわ。不味いって母親の人が言ってたな……。しかし、自分で食べずにそれを盲目的に信じて生きていくのは果たして善いことなのだらうか……。」

「……か…?……かい?」

「だっ、だれ!?!?」

「ロッ○リアのハンバーガー、食べるのかい?食べないのかい?どっちなんだい?」

「!!!……たーべー……る!!!!」

「パワー!」

脳内なかやまきんに君!脳内なかやまきんに君だ!脳内なかやまきんに君よい子の味方!何故かというとパワーだから!シャオラ!勝利!!俺は……俺は……今から人生で初めてロッ○リアにアムロじゃないけど行きまーす!アムロじゃなくても行くときは行くんだよオラァ!!

そんな感じで俺は光速でロッ○リアに詰め寄り、まずは店の前にあるメニューをガン見する。入ったことがない店、しかもカウンターに並んで注文するタイプの店に入る場合は、こういう事前準備が重要なのだ。あれは学部生の頃、初めてサ○ウェイに行ったとき、「(この中で)苦手な野菜はありますか?」と聞かれて「えっ、キュウリが嫌いです!」と純粋に自分が嫌いな野菜を答えてしまった俺はもういない。この厳しいファストチェーン店ワールドでは、「いやそんなん知らんですけん!」という言い訳など通用しないのだ。

メニューを見てロッ○リアの様々を把握した俺は光速で店内に入り、お持ち帰りでベーコンチーズバーガーのセットを頼む。もう誰も俺を止められない。光速になっちゃったから仕方ない。俺の心は今や光の速さなのだ。そしてそのままの勢いを保ったまま電車に乗り、家に帰り、手洗いなどを済ませたのちハンバーガーを口に運んだ。

 

は?美味いやん。

 

なんか、こう、私はバカ舌である。お値段高めのとんかつ屋に入ってヒレとロースの両方のセットを頼んでも、「どっちがどっちやコレ」という問いが食べ終わった後も未解決問題として残り続けるレベルのバカ舌である。なので詳細な飯の感想が言えず、「美味しい味がしてよかった」か「好みの味じゃなかった」のどちらか一方に感想が収束してしまうのだが、とにかくこれは「美味しい味がしてよかった」のやつやんけ。誰!?僕にロッ○リアのハンバーガーは不味いって言ったの誰!?俺の母ちゃんだよ!!ママ、救いはないんですか!?

ロッ○リアのハンバーガーの感想について実際に食べて調べてみたところ、ロッ○リアのハンバーガーはフツーに美味いということが分かりました。どうでしたか?みたいな情報量のないサイトみたいな感じの結論である。でもまあやっぱ自分で調べないと分かんないし、他人からの謎情報に支配されるのはよくないですね。この支配からの卒業をしていけ。それ以降、ロッ○リアには病院帰りにもう一度行った。やっぱね、家の近くとか、出先から帰宅までの道に店舗にないとなかなか行けないですよね。

 

しかし、私にはもうひとつ課題が残されていた。そう、K○Cである。

基本的に私は食に対するこだわりがゼロ、というか寧ろマイナスである。なのでこう敢えて何か食いに行くぞみたいな欲求が基本的にない。つうか飯を食うのってめんどくさいとしか思っていない。そんな食への執着を棄てた悟りの境地に近い人間なので、「よーし、今日はK○Cに行くぞ~」みたいな気持ちにならないわけである。ものは言いようだな。

そういうわけでロッ○リア電撃訪問から半年以上経ってもK○C襲撃事件を起こさなかった小市民ばあちゃんなのだが、まあこれを書いていることから推察できるだろうけど、この間ついに入店したのだ、あのK○Cに。クリスマスの時期は妙にテンション上がってるK○Cに、である。

よく使う駅の地下に喫煙所があって、私はほぼ毎回そこに寄るんですけど、その日は普段と違うエスカレーターで地上に上がった。本当になんとなく。そうしたらエスカレーターの目の前にK○Cがあった。K○C、現前である。「あれ、こんなとこにK○Cあるんだ。今日は茄子の揚げ浸ししか食べてないからこの機会に買って帰ろう!」と思って列に並ぶ。さて予習だ、と思って看板に貼ってあるメニューを見る。

全部同じじゃね?

いや、なに、え、どれ頼めばいいの?なんで2000円もするの?アッ量が多いのか!?ハンバーガー!?ハンバーガー売ってんの!?いやチキン食わせろよK○Cってチキン屋さんじゃないの!?待ってくれ、1人用で一番シンプルなのはどれ?これ?この、これ!?どれ!?!?

とアワアワしていたらすぐに順番が来てしまい、メニューの十全な予習が出来ないまま店員さんの目の前に連れ出される。波乱の予感だ。思考回路はショート寸前を通り越して只今絶賛ショート中である。子供の頃「思考回路」じゃなくて「思想回路」だと思っていた。どんな回路だ。

店員さんの笑顔にビビりながら、カウンターに置かれたメニューをウロウロした眼球で捉える。やっぱ全部同じじゃねーか!

「あ、お、オリジナルチキ~ンのやつ…を?」

「ボックスとセットとございますが……」

「ボック……セ~???んん???」

「???」

「???」

よーし、いい子だ落ち着け~?ボックスってなんだ~?ボックスとセットの差異とは~?店員さん、明らかにヤバいヤツを見る目をしている。落ち着け、もう一度メニューを見るんだ、そして注文しろ。

ということで素早くもう一度メニューを見る。眼球をぐりぐり動かしてそれっぽいのを見つけたときの私の感動分かる?「アッ、セット!セットで!」と感動にテンション上がる私を「ああ、セットですか……」と苦笑いで見ている店員さんが「なによこの人、K○Cにも来たことがないのかしら?」みたいな目をしていたので、「なんですの!?わたくしお嬢様、おファストおフード店であらせられるおK○Cなんて今まで一度も来たことがございませんのよ!?」とブチ切れ半狂乱お嬢様になりそうでしたけれども、わたくしお嬢様ですのでグッと堪えましたわ。わたくし精神的貴族でございますので、その程度ではブチ切れ半狂乱お嬢様にはなりませんことよ?一昨日いらっしゃいまし!!!(ブチ切れ)

お嬢様になりながら何とかオリジナルチキンセットを手に入れ、電車を20分ほど待って、ボックス席に座る。

手にはK○Cである。

25年前の味の記憶なんてほぼないので、K○C初体験に等しい。テンションもあがる。斜め前に座ってる女の人がじっと見てきたので、その人に「これから四半世紀ぶりにK○C食うんすよ」と自慢したくなった。ちなみに帰ってる最中こけた。冬にこけるって人生における最悪な出来事のひとつ。

 

さて、K○Cだ。包みを開けると、ポテトとジュースと薄い紙に包まれたチキンが入っていた。「あ、これCMでよく見る形のヤツ~」と思いながらまずはドラムにかぶりつく。

美味いが。

いや、美味かったよ?美味かったんだけどすっかり冷えちゃってて、なんかK○Cのチキンが本当に持っているチカラがイマイチ分からなかったんだよね。アチアチのまま食べられる分、ファ○マのプレミアムチキンでよくね?になってしまうというか。値段同じだし。もうひとつ入ってたのが多分リブで、ドラムよりリブの方があっさりしてて好きだった。美味しい味がしてよかったです。ばあちゃんはあっさりした肉が好き。脂身とかサシとか要らないんや……。

注文もワタワタしちゃったし冷えててよく分かんなかったしで、ほぼ初K○Cは不完全燃焼で終わっちゃった。ふふ、しかしこういう不完全燃焼もまた楽しいものだ。次は店内でアチアチ状態のやつを食べてみようとニヤニヤしながら思う。今度行くときは「K○C?よく知らないけど100億回は行ったぜ」みたいな顔して注文しよう。強者の顔をもってして行くぞ。そういうことを考えながら骨の後始末をしていたら、ロッ○リアとK○Cに入った達成感が押し寄せてきて感動してしまった。その程度で何を言ってるんだコイツと思うだろうが、ファストフード店に入るとか、おみくじを引いてみるとか、そういう些末な事柄が重要な意味を持つこともある。奇妙だね。ばあちゃんの奇妙な事実 part71だね。

次は何をしようかな、と考える。何でも出来るぜ、金さえありゃあな!!!